製造工程でプレスと聞けば、「ドスン」と金型で板材を押し込んで成形する技術になります。一度正確に金型と調整さえできれば、安定して同じ形状が得られることから外観部品に多く用いられる製造方法です。
しかし、プレスの生産方法では材料を金型で曲げる関係で、板厚分の外側になる表面のエッジが立てにくく境界線がボケやすい傾向があり、結果として意匠的にエッジを立てにくい特徴(デメリット)があります。
以下が、プレスで板材を曲げたときのイメージです。表面側がRになってしまう理由になります。
プレス品は板厚が厚くなればなるほど、いくら金型の内側を鋭角に立てても板厚分で外に出てくるラインにはRが大きくなってしまいます。
これは製造上で仕方のない部分と、角を立てて成形するプレス方法はありますが、目的が大量生産、コスト的な問題からも境界線がはっきりと出ているプレス加工品をまず目にすることはありません。
そこで、意匠的に境界線を出す目的とした場合に、一つの方法として切削(ビレット)で作る方法もあります。
プレス品をアルミ切削で作った場合
ほとんどの詳細寸法が同じで、(意匠)形状も同等のもので比較して、プレス品とアルミのビレット(切削)品の違いを見ていきます。「生産方法の違いで同じものの比較」とします。
プレス品とアルミの切削品を比べてみる
左は調べていませんが恐らく真鍮製のメッキ仕上げ品。これをアルミの切削で作ると右になります。エッジが立っておらず、ぼやけた形状が、アルミの切削であることで輪郭がはっきりとして、それぞれの面も強調されています。
特に左のプレス品は、金型から抜きとる必要もあるため、意図的に外観にR(曲線形状)に構成して設計されてしまいます。意匠性に制限が無い限りは、極力R形状を大きく取りますので、輪郭はぼやけます。
アルミ切削品では肉厚を厚く必要とする
2つを並べてみると、一回りとはいかなくても、アルミ切削品の方が少しだけ大きく見えます。
これはプレス品の大きなメリットでもある、板厚は薄いほど成形しやすいことからも、素材が薄いものを利用されています。
アルミの切削品はチャック(切削機械で材料を固定)する必要があるので、強度を要すために、どうしても肉厚が必要となりまして、プレス品と比較すれば同じ形状でも大きくなってしまいます。
裏から見た場合
裏から見ると、素材の厚み自体の違いが大きいことが分かると思います。右のアルミ側もプレス品のように見えますが、削り出しています。ちなみにここまで薄く削るのは簡単ではありません。
左の真鍮製は末端部分で素材の厚みが0.1㎜(引き延ばされているため)程度です。一方、右のアルミ切削品ではこの形状を切削で作る際には加工機の関係で今回は約0.7㎜になりました。
もう少し薄くできそうでもありましたが、試作品のため0.7としています。しかし、単純に7倍もの厚みになってしまいます。
今回紹介しているのは削り出し(切削ビレット品)であるために、素材厚としては7倍もの厚みになりますが、アルミもプレスで作る場合には、板厚はずっと薄くできます。しかし、プレス品は左の真鍮製同様に、境界線のラインはぼやけてしまい、精細さは感じられなくなります。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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