設計をする際に使用するネジの長さをいくつにしたらいいのか?と質問されることが多々あります。そこで、ネジ径別にまずは最低限の「必要ネジ部の長さ」ついて知っておく必要があります。
ここで紹介する計算方法は直径別にネジには「最低でもこの長さが必要」ということでご紹介しています。
厳密な機械設計では限界まで詰めていくことも多くなるため、この考え方だけでは足りません。あくまでも一般の方が「簡単にネジの必要な長さを知りたい」場合の考え方としてください。
基本的な長さの考え方を最初に申し上げると、
使用するネジの長さの設定方法
ネジの長さ=最低でもネジ径と同じ、基本はネジ径×1.5です。
至って覚えやすい考え方になります。最低でもネジ径以上の長さが必要ということです。この考え方はネジ山のピッチに関係しています。
最低長さの計算例と考え方
例)M10×P1.5のネジを使用することとした場合、
最低でも10mm、基本は15mm以上となります。
この場合、M10のピッチが1.5mmのため、最低長さの10mmで考えると10/1.5=6.66山が有効ネジにかかる山の数になります。しかし、計算上の全てのネジ山が有効になることはなく、ボルトやネジの「首下直下」と「先端」は不完全になることが多く、ネジ山が効かないため実際には6山を切ります。
一方、基本の1.5倍(長さ15㎜)とした長さから見ていきますと、15㎜/ピッチ1.5㎜で10山になります。実際には8.5山分程度が完全ネジ部として、しっかり効いているとして、8.5山×1.5㎜=12.75㎜分が完全ネジ部としての実質的にネジ同士がかみ合っている長さになります。
完全ネジ部を考慮してネジ径×1.5倍の長さ以上とする
ネジやボルトのネジ部分には、先端には面取り、首下には不完全ネジ部が出来てしまいます。ネジ山が完全に形成されているのが完全ネジ部です。この完全ネジ部の長さが重要になります。
そのため、不完全ネジ部を考慮した+αの長さを必要とします。「最低でもネジ径の長さが必要」という意味としては以下のような考え方です。
例)M6×P1.0の場合
M6の直径6mmでピッチ1.0㎜では、「6山分は最低噛み合わせることが必要」+「不完全ネジ部」となり、M6でしたらネジの長さは8mmくらいが最低必要だという意味としても捉えてください。直径=長さで6mmでもほとんど問題ありませんが、強度は最低限です、ネジ山同士も潰れやすくなります。
ネジの長さには現れない部分になるので、その分を考慮したマージンとして、「ネジ径=最低長さ」だけでなく、理想的に1.5倍となります。
これはボルトやネジのネジ山が必ず同じように出来ていないことや、ネジ山の形成の仕方で同じ考え方はできないため、その分を考慮した一般的な考え方になります。汎用ネジ類を使用せずにネジも一緒に設計される場合でも、ネジの設定長さは同じ考え方です。
多くのネジやボルトの長さは最低ネジ径+αから設定されています。(M6であれば8mmくらいから)これは同じような考え方からくるものです。
ネジの長さ基本設定
ネジの長さはネジ径の1.5倍の長さで強度は保てます。
特殊な用途や特にネジやボルトに力が大きくかかる場合や、素材が金属でも柔らかい真鍮やアルミなどの場合はネジ長さを長くしていくことは必要です。ここでの長さは鉄鋼材のS45C相当での数値になりますので、目安として捉えてください。
ネジ径別の最低ネジ長さ早見表
ネジ径×1.5とした理想長さの一覧と、ネジ山が何山分(噛み合いピッチ数)に相当するのかまとめています。
ネジ径 | 理想長さ | 基本ピッチ | 噛み合いピッチ数 |
---|---|---|---|
M3 | 4.5 | 0.5 | 9山 |
M4 | 6.0 | 0.7 | 8.5山 |
M5 | 7.5 | 0.8 | 9.3山 |
M6 | 9.0 | 1.0 | 9山 |
M8 | 12 | 1.25 | 9.6山 |
M10 | 15 | 1.5 | 10山 |
M12 | 18 |
1.75 | 10.2山 |
M14 | 21 | 2.0 | 10.5山 |
M16 | 24 | 2.0 | 12山 |
M18 | 27 | 2.5 | 10.8山 |
M20 | 30 | 2.5 | 12山 |
- 噛み合いピッチ数は単純計算で不完全ネジ長さを考慮していません 。
- ピッチは並目のピッチです。細目は山の噛み合い数が多くなります。
細目の場合の最低長さは?
ネジピッチが細かくなる「細目」の場合も同じように考えてください。これは細目の場合はピッチは細かくなりますが、山も小さくなるためです。
山が小さい分噛み合い強度は落ちています。その分をピッチの数で補いますので、同じように、細目もネジ径×1.5を最低長さとして捉えてください。
木材や樹脂などは別の考え方になります。
木材や柔らかい素材にはそもそもボルトを使用できるようなネジ山が立てられません。そういった場合はポップナットやアンカーなどを埋め込む必要があります。樹脂の場合も同じでナットを裏から使用したり、タッピングで勘合させるなどの素材別の工夫が必要になってきます。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
この記事の前後リンク
- 個人情報やプライバシーを侵害するような情報
- 閲覧される他の方に不快を与えるような内容や他の方に対しての暴力的な言葉や中傷
- 著作権の侵害・法律や倫理に反する行為
- 個人的に偏ったご意見や見解、他社を含む商品・サービスの不平や不満
- 個別記事の初期投稿日から一定期間を過ぎ、コメント投稿を受け付けていない場合
- 商品の感想または不具合など、個々に対応する必要がある案件
- 個々の記事に関係のない内容や話題の乱雑な投稿、迷惑なオフトピック
- その他、投稿時期のAI判別による不正防止と時事的な内容に抵触する場合など