穴を空けるためには『ドリル』を使用することがほとんどです。なにより加工の最初の段階で行われる穴あけ加工では、「(卓上)ボール盤」などの機械で正確に綺麗にあけることが求められます。
ボール盤は穴あけに特化した工作機械の一つで単機能です。ドリル以外にもリーマーや沈め(段つき)加工は切削工具によって可能です。ボール盤にも主軸のXYZが移動させられるラジアルボール盤などもあります。
ここでは(卓上)ボール盤で金属にドリルを使って穴を空ける際に、回転数をどれにしたらいいの?という点で
「ボール盤で穴を空けるときの回転数 」
についてご紹介していきます。加工する素材よりも優先されやすいのはドリルの直径になるため、ドリル径別に大体の回転数を以下にまとめておきます。
ドリル直径別ボール盤回転数表
ドリル直径 | 回転数(対象は金属) |
---|---|
1mm | 1,500~2,000rpm |
3mm | 1,000~1,500rpm |
6mm | 600~1,000rpm |
8mm | 500~800rpm |
10mm | 400~600rpm |
13mm | 300~500rpm |
穴あけ時のポイント
- 素材は金属の中でも特に多い鉄(S45C)としての目安数です。
- 素材(硬さ)によってここから回転数を上げたり下げたりします。
- (ハンドルでの)送りは自分で感覚的に調整できますので回転数が少し違っても穴は空きます。
- 細いドリルは回転数を上げる、太いドリルは下げる
- 素材が柔らかければ上げる、硬い場合は下げる
- 加工物がガタガタするなら、回転数を大きく下げて油を挿しながらゆっくりハンドルを下げる。
面取りカッターの回転数は?
面取りカッターの回転数は空けた穴径にもよりますが、低い回転数(500rpm前後)が適切です。
ボール盤の回転数を変えるのは面倒なので、穴あけしたドリルの回転数のまま面取りカッターに変えてそのままさらってしまっても良いでしょう。
C面のCは英語の「CHAMFER」の頭文字になります。chamferは【角を取る】などの意味になります。
ボール盤の(ドリル)目安回転数について
ボール盤は細かい回転数設定ができないため、大体の数値で問題ありません。これは送りがハンドルで自分で調整できるためです。ハンドルをゆっくりと引いて(押して)戻してと、何度も繰り返して慎重に空けます。
ドリル径別回転数の目安
- 直径6mmのドリルでしたら、600~1,000rpm程度が目安になります。
- 直径10mmのドリルでしたら、600rpm以下が目安です。
- 直径2mm未満などは2,000rpmは欲しいところです。
ボール盤で金属に穴を空ける場合「単に一か所穴が空けば良い」というだけならば回転数を気にする必要はありません。どんな回転数を選んでも素材選ばず穴を空けることはできます。
これはボール盤の場合は送り速度が手動のためでもあります。
薄板(厚み3mm未満)に穴を空ける際には、ドリルも先端形状がフラットな薄板用を使用することをお勧めします。
ボール盤でのドリル回転数の考え方
↑こちらは卓上型ボール盤の回転数切替表です。5段階で変更でき、頭のベルトの位置を変えて回転数が変わります。
何度も同じ穴を空ける場合や、綺麗な断面の穴をしっかり空けたい場合は、正しい計算式から導き出してドリルの種類や加工する素材に合わせて回転数を設定しておきたいものです。 (ドリルメーカーの推奨値は次の章を参考にしてください)
推奨回転数はドリルごとに計算できますが…
ドリルの種類や違いでドリルメーカーの推奨回転数は計算式で求められますが、卓上ボール盤の場合は回転数が3~5段階ほどしか選べませんので、回転数をしっかり計算しても、そもそもボール盤では細かい回転数の設定ができません。
そのため、金属(鉄)への穴空け時には以下のイメージでおよその回転数を決めてください。
直径6mmで1,000rpmを基準にして、
『ドリル径が太くなれば遅く』
『細くなれば回転数を上げる』
という程度で考えておけば良いです。
- ドリル直径が大きくなれば回転数を下げる
(目安:ドリル径10㎜で500rpm) - 細くなれば回転数を上げる
(目安:ドリル径3㎜で1,600rpm)
13㎜を超える大径ドリルの場合
一般的な卓上ボール盤にはドリル直径が13mmまでしかシャンク(掴む部分)に入りませんが、先だけを太くしてある直径30mmなどの大径ドリルを使うようでしたら、回転数を大きく落として(300rm以下で回して)ドリルにトルク(チカラ)をかけ、ゆっくり空けていきます。
必要に応じて油を差してあげる必要もあります。
素材ごとで回転数を上下する
なお、上記は加工対象物が(鉄)鋼材の場合の目安になっています。
アルミや真鍮、木材などは回転数を1段(+200回転)上げるくらいが適切です。
>鉄より硬いか柔らかいかで調整
- 柔らかい材料=回転数を上げる
- 硬い材料=回転数を下げる
送り速度について
ボール盤の場合は送り速度が手動です。これが細かく回転数を選ぶ必要がないポイントでもあります。ハンドルで「少し押し当てては離すを繰り返す」ことで送りの速度を調整します。
ハンドルで送り速度を調整することは、自分の手の感覚だけに頼ることになります。
穴を空けている際に異音が強くなったり、回転数が落ちていまう場合は(加工対象にドリルを)押し当てすぎです 。もっとゆっくり沈めていくか、回転数を一段低くして試してください。
関連記事
ボール盤の回転数の変更方法はこちらを参考にしてください。
まとめ( ボール盤で穴を空けるときの回転数設定 )
ハンドドリルと異なり、ボール盤は対象物を固定して力が掛けやすく、垂直に穴を開けることが容易です。厚みのある対象物に対しても有利で手軽な加工機でもあります。
- ボール盤の回転数は大抵4種類ほどしか選べないため、加工対象が厚みのある金属でない限り、一か所空けるだけなら何でも良い。
- どんな回転数でも穴は空きます。レバーでの送り速度で調整
- 切り子が詰まらないように、レバーの上げ下げを繰り返すこと。
- ドリル径6㎜で1,000回転を基本として、対象が硬い(厚い)場合は回転数を下げる。
- ドリル径が太くなれば回転数は下げる。
参考)加工する素材別の推奨ドリル回転数
ドリルの正確な回転数は計算式で求められます。しかし回転数を計算するためには、送り速度も関係し素材別でも違ってきます。条件が多すぎて計算するのはとても面倒です。
ドリルメーカーごとでも適正回転数は変わってきますので、ここでは一般的なHSS(ハイス鋼)での素材別のドリルメーカー推奨回転数を表にまとめておきます。
この表の注意点としては、素材別で送り速度も違います。この回転数はドリルメーカーの推奨値で、ボール盤で設定する回転数とは異なります。マシニングセンター等で自動加工する際の目安でしかありませんので、不要な方は飛ばしてください。※ボール盤との違いを見るための参考掲載です。
鉄(S45C相当)
ドリルの直径 | 回転数 |
---|---|
2 mm | 4,000 rpm |
3 mm | 2,650 rpm |
4 mm | 2,000 rpm |
5 mm | 1,600 rpm |
6 mm | 1,350 rpm |
8 mm | 1,000 rpm |
10 mm | 800 rpm |
13 mm | 600 rpm |
※SS400でしたら2割増し
アルミ(A5052P相当)
ドリルの直径 | 回転数 |
---|---|
2 mm | 7,950 rpm |
3 mm | 5,300 rpm |
4 mm | 3,950 rpm |
5 mm | 3,200 rpm |
6 mm | 2,650 rpm |
8 mm | 2,000 rpm |
10 mm | 1,600 rpm |
13 mm | 1,200 rpm |
ステンレス(SUS303,304相当)
ドリルの直径 | 回転数 |
---|---|
2 mm | 2,400 rpm |
3 mm | 1,600 rpm |
4 mm | 1,200 rpm |
5 mm | 950 rpm |
6 mm | 800 rpm |
8 mm | 600 rpm |
10 mm | 500 rpm |
13 mm | 350 rpm |
穴あけ前にはセンタードリルを忘れずに!
いくら中心がズレない卓上ボール盤でのドリル加工でも、いきなりドリル加工を行う前にセンタードリルでの位置決め加工は大変有効です。以下の記事も参考にしてください。
関連記事
過去記事の『穴あけ前の下穴加工センタードリル』も参考にしてください。
特に目安としてドリル径3mm未満の小径ドリル加工前には、このセンタードリル加工は必須です。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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