ネジを機械製図の図面で描く場合は、山と谷がギザギザした部分は手描きではとても面倒なので省いた描き方をします。また、現代のCADを用いたとしてもギザギザ部分まで表現したところで図面が見にくくなりますので、ネジ部は省略して描きます。
ネジ部は省略して描くのは簡単になるので良いのですが、省略の描き方が間違っている生徒さんも多いです。そこでネジを図面で描く場合の正しい描き方、意外にも統一されていないためによく聞かれる、細線と太線の意味や境界から引っ張る補助線の角度についても解説していきます。
タップ穴(雌ねじ)を見たまま描くと
ネジ・ボルト(雄ねじ)を見たまま描くと
ネジを構成する線の全てを描いたとするならば右の線画になってきます。これを手描きで描くのは面倒ですし、効率も大変悪く何ら図面を完成させる目的に不必要です。そのため、機械製図では省略した描き方があります。
図面上の太線と細線の違い
ネジの図面で記載される太線と細線には以下のような意味があります。
- 太線は(物理的に見える)アウトラインと構成の境界線になります。
- 細線は想像線となり各要素の補助線になります。
想像線(補足)は細線、実物では見えなくても物体として構成する最大の外形や角になる要素は太線
以上の分け方から、先ほど使った雌ねじと雄ねじのイラストの上に太線と細線を表すとこのようになります。
ネジ部を描くときの太線と細線が基本部分がこのように分かれていることが分かっていれば簡単です。雌ねじと雄ねじを描くときに線の太さが反対になる理由はこの違いからになります。
これらを踏まえて、太線と細線を利用して図面を描いていくことになりますが、ネジを描いていると「各線の正しい角度」があるのかどうか?または覚えていないという事は多々あると思います。
実は製図上での有効ネジ部分の角度は正確な決まり(統一)がありません。
各々の会社で独自に決めたものや、教育現場では教科書などから参照しており、ある程度の自由度があります。
雌ネジ(めねじ)の描き方
雌ネジ(めねじ)はタップ加工された穴を想定するとします。雌ねじの場合はタップ加工の手順において下穴が必要なため、下穴+ネジ部(+面取り)で1セットになってきます。
ネジ部の「有効ネジ長さ」と「ドリルの肩までの深さ」のライン(ここでは水平線)は太線になるため注意が必要です。細線で描いてしまう方が多いです。
不完全ネジ部の角度は、検図担当者に確認する必要があります。特に指定が無ければ60°で記載すれば図面上の問題ありません。
貫通(通し)ネジ穴を描く場合
貫通穴(通しネジ穴)の場合はドリルの先端を描くことなく、裏側になる面まで一直線で太線(ネジの山)と細線(ネジの谷)を描くだけです。裏面の面取りが必要な場合には加えてください。
雄ねじ(おねじ)の描き方
雄ねじはボルトを例にします。雄ねじの場合は割とシンプルになりますが、注意点としては雌ねじ同様に、「有効ネジ部」と「先端の面取り部分」の境界線は太線になります。
先端の面取り部分んの角度は45度ですが、開始点は谷(ピッチ)のラインからで構いません。但し、実際のネジは一緒ではありません。
不完全ネジ部の角度は検図者に確認してください。
図面でねじ部を描くときのまとめ
雄ねじ、雌ねじ共にネジ部分を図面で描くときは太線と細線を用います。その線の太さは以下のように注意しておけば、見本を見なくてもどちらを選べば良いのか分かります。
- 細線は雄ねじも雌ねじも谷側を表している
- 有効ネジの境界線は太線
- (雌ねじの場合)ドリルの肩は太線
- (雄ねじの場合)先端の面取りの境界は太線
よくある間違い
検図をしていると、何よりよく間違いやすい部分で「有効ネジ部を繋げて描いてしまうこと」が挙げられます。この部分の線は不要で、線を描いてしまうと機械設計では減点対象です。
覚えてしまえば簡単なことなのですが、たまにネジを図面で描こうと思ったときに正しく描きたい場合は、太線と細線の正しい描き方は少し混乱しやすい部分です。
自社製品などの設計を製図する際に、この辺りが間違っていても生産上は全く問題はありませんが、極力正しい描き方で製図しておくほうが良いことには間違いありません。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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