アルマイトと聞くと、アルミに色を付けるイメージを持つ方が多いと思います。一般的にはアルマイトは下地処理(表面処理)も含めた総じた呼称になってきてますので、色付けする工程はカラーアルマイトになってきます。
カラーアルマイトではアルマイト処理で表面に微細な穴を無数に掘って、そこに染料を流し込んで色付けされます。
その穴を掘る(アルマイト)前の表面状態の違い、またはアルマイト穴の大きさ違いでも、最終的に色付けした完成品は、同じ色でも下地処理の違いで色味が変わってきます。
アルマイトの下地違いは主に3種類
下地処理(表面処理)の種類は大きく分けると3種類になり、それぞれ処理方法が異なります。アルマイト、カラーアルマイトを施す前に行います。
- 光沢 = 加工品の表面が綺麗な場合に有効
- 梨地 = 化学研磨を略して化研(カケン)と呼んでいます。
- ショット = 極小の球を当てて表面を慣らします。
「梨地」は【なしじ】・【ナシジ】と読みます。ちなみに地を使っているので「なし」+「ち」に「゛」で【なしぢ】のような気もするのですが、正式には「し」に「゛」の【なしじ】になります。
アルマイト(穴を掘る工程)を行う前に、表面に下地処理を施すことで完成する色味も異なってきます。目的や求める仕上がりや雰囲気によって選んでいきます。
なお、アルマニアでは下地違いを以下のように呼称記載しています。
- 光沢 → グロス 艶有り(GLOSS)
- 梨地 → マット 艶消し(MATTE)
- ショット → ブラスト 凸凹(BLAST)
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過去記事の『アルマイトの作業手順を画像付きで紹介しています。』も参考にしてください。
なお、アルマイトはあの理化学研究所が発明した日本の技術です。
1929年に理化学研究所で開発された。当時アルマイトは登録商標(商品名)であり、理化学研究所で開発された方法により生成された蓚酸法陽極酸化皮膜のみに限定されていたが、現在は「アルミニウムの陽極酸化皮膜」の総称として使用されている。
Wikipediaより抜粋
3種類の下地処理違いを比較
異なる下地処理でそれぞれの違いを見ていきます。比較しやすいようにオレンジとブラックのカラーアルマイトサンプルを並べています。順番に表面の粗さが強くなっていくことが分かると思います。
1. 光沢(無処理)
下地処理としてはほとんど無加工でカラーアルマイトを施します。無加工といってもカラーアルマイト前の脱脂処理を行いますので、次の梨地処理と工程上はほとんど変わりません。最も艶の出る方法ですが、もともと処理前の表面が綺麗でないと有効ではありません。
- 艶が出てカラーの彩度が高い
- 切削跡も見ることができる。模様を消したくない場合に有効
- 打痕や細かな傷が処理前にあっても消せない
- 加工前の表面がとにかく綺麗な場合に可能
2.梨地 (化研)
梨地にするためには化学研磨(カケン)による下地処理方法のため、物理的なものでは液体に漬けて処理されます。強弱を付けることも可能なため、梨地も極端に行っていくとブラストに近いところまでできますが、ボロボロの表面になりがちなので、ブラストまで強くない、均一な下地で優しい見た目になります。
- 艶消しのマットな雰囲気を持つ
- 均一な表面で優しい仕上がり
- カラーは白味がかる
- 切削跡まで消すには指定が必要。加工前の表面が綺麗な場合に可能
3.ショット (ブラスト)
サンドブラストと同じ原理で、ビーズや砂などを表面に打ち付けて均一化します。細かい傷は消せることができ、アルマイト製品の多くはほとんどがこの下地処理になってきます。ザラザラ面になりますが、様々なショット方法があるため、その方法によっても仕上がりが異なるため、ショット方法も選ぶ必要があります。
- 凸凹面になり、ギラギラ感が出る
- ランダムなショットの表面は均一感が強く大きい平面に有効
- 生産上で傷が多く発生する表面を消し去ることができる
- ショットの工程がアルマイトの一連工程とは別作業になる
- プレス品、生産工程上で付いた接触や擦り傷を消せます。
同じカラーで下地3種類を比較
左から、光沢・梨地・ショットの3種類を同じカラーで並べています。下地の違いで色味が異なってきて、更に雰囲気(印象)の違いがハッキリと出てきます。
オレンジは有彩色、ブラックは無彩色に部類されます。そのため、この2色で比較しています。
オレンジで比較
傾向としては彩度が強いカラーとなる有彩色(赤、青、緑など)には光沢仕上げが色味を強く発し適しやすいとも言えます。
ブラックで比較
無彩色(黒)の場合は光沢だと光の反射が強く出てきます。アルマイト膜の厚みは薄いため、漆黒の黒とまではいきません。無彩色の場合は梨地が適しています。
下地選びの重要性
普段目にするアルミの製品は、下地+色によって構成されています。遠目で見てしまえば、赤、黒、銀など大まかに認識しますが、手に取った時や近くで見たときに、その下地まで含んだ仕上がりで製品の雰囲気までを感じることができます。
アルマイトを行う上では、この下地処理選びが重要です。このようにアルマイトには様々な要素が複雑に絡みますので、いくらアルマイトカラーの原液を調色しても下地で色味は変わりますし、100%を目標とした色に仕上げることは不可能です。
どの方法でも正解とうものはありませんが、プロダクトデザインでは、この下地も考慮して設計や製造方法そ選択していく必要があります。製品として求める仕上がりやアルマイト前の加工品の表面状態を考慮して決めていく必要があります。
まとめ
- アルマイトの下地は大きく分けて3種類
- 下地は表面粗さの違い
- アルマイトは下地+色で構成されている。
- 梨地は白味が出てくる
- 下地違いで同じカラーでも色味が異なる
- 光沢と梨地はもともとの表面が綺麗でないとできない。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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