加工工具のドリルやホールソーは、基本的には平面に対して穴を空けるものになります。しかし、平面ではない凸凹や異形の表面に丸穴を空けるには、工具は傾いてしまい利用できません。
ここでは板金(プレス)された異形の板材に対して有効な方法の一つとして、「凹凸のある異形の表面に丸穴を空ける方法」の一つとしての作業手順を紹介していきます。
なお、今回の方法であれば丸穴でなくても、三角形でも空けることはできます。但し2㎜くらいまでの板厚の薄い板金プレス品に有効な方法であり、(厚みのある)無垢材の表面が凸凹している場合は、一度エンドミルや沈めフライスで平面を作ってから丸穴を空ければ良いとなります。
その凸凹を持つ複雑なプレスラインとして、自動車のドアの内面があります。以前ツイーターの取り付け方法で紹介していますが、ここではツイーターの直径(45㎜前後)を収めるための丸穴を凸凹のプレスラインに空ける方法になります。
異形のプレスライン表面に大きな穴を空ける手順
マスキングして穴の中心を決めます。
空けたい穴の大きさを把握するためにもマスキングテープを貼って、コンパスで下書きしています。うっすら見える円が空けたい穴の大きさになります。
マスキングは作業時の傷防止にも役立ちます。必ずマスキングテープで大きめに保護してください。
ホールソーを使った場合、画像上で上側と右上だけに刃が当たり、中心からズレなくてもホールソーや自在きりでは傾いてしまい一向に穴は開けることはできません。
ステップドリルもここでは裏側がドアの表面になりますのでそこまでのドアの内板と外板の間の深さはありませんし、そもそもドリルで45㎜の大径の直径サイズはまずありません。直径を調整できる自在錐なども両側の刃が一緒に当たらないため、逆に危険です。あくまでもドリルなどの工具は平面に対して有効な切削工具です。
ここでの例では板金された板材に対して穴を空けようとしているため、ドリルを使用するにも刃先の形状が違う「薄板用ドリル」を用いる必要があります。
センタードリルを使用する
ドリルでは賄えない大径の穴を空けたい時に使用するホールソーも自在キリも使用できない時、センタードリルを用いて少しずつ空けていく方法を取ります。
ここでは電動ドリルにセンタードリルを取り付けて無数の穴を空けていきます。電動ドリルは極力充電式(コードレス)ではないほうが作業は楽です。インパクトドライバーは避けたほうが良いでしょう。
センタードリルが適しているのは先端が強く刃が短いため力(押し込むチカラ)をかけやすく、穴が空けやすいためです。
しかし、穴としての直径は小さい3㎜程度のため、何度も穴を空ける必要がありますが簡単にあくため無数の穴を空けるには便利です。
また、6㎜程度のドリルで空けようとすればドリルの場合は長さがあるためそれが仇になり、中心が定まらず空けにくいです。また、貫通したときにここではドアの外板までに到達する恐れもあります。
面倒に感じるかもしれませんが、センタードリルであれば穴は簡単に空くので、繰り返し穴あけ作業を行ってもこの画像の穴数であれば作業自体は5分程度でしかありません。
穴と穴の間の肉をカットしていく
いくら穴の数を増やしても限界がありますので、穴と穴の間はつながっています。それをニッパーなどでカットしていきます。穴の距離はできるだけ狭い方がこの作業は楽になります。
めくって抜き取る
しっかり穴が空けてあれば(穴と穴の間の肉厚が薄ければ)、カットも半周くらいして、カット部分をめくってしまえば全体が切れてもいきます。
最後はサンダーで仕上げる
くり抜いた内側をベルトサンダーで仕上げていきます。棒ヤスリなどでは正直時間がかかり難しいです。ここは電動工具をチカラに頼りましょう。
異形プレスの表面に空けた穴
最終的には円形ではなくツイーター形状の関係と配線の関係で、真円ではなく楕円のようになりましたが、この方法で通常ドリルやホールソーでは空けられない平面ではない異形のプレスラインに穴をあけることができます。
また、円形だけでなく複雑なカットラインでも同様の手順で空ける(カットする)ことができます。
「異形の表面」+「異形のカット形状」に有効な方法です。
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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