ネジ穴を作る際には下穴を空けた穴にタップ加工(タップを立てる)を行います。
そのタップ加工の前にはドリルで下穴を空けておく必要があり、作りたいネジ穴径または使用したいネジやボルトの長さによって必要な下穴の直径と深さが異なります。
ここでは、タップサイズごとのドリルであける下穴径と下穴の深さを解説しています。
下穴深さについては計算式で求めますが、電卓片手に計算するのは面倒でもありますので、ここでは下段に「下穴深さの自動計算表」を設置していますので、簡単に下穴の深さも求められます。
(使用するボルトのM径と長さ、ピッチからの計算になります)
タップ加工用の下穴径はネジ穴側の山の先端になりますので、ネジ穴の強度に直結する重要な部分になります。
また、タップ加工(ネジ切り)の作業効率にも関係しますので正しい下穴サイズの選択と深さを考慮する必要があります。
タップ用下穴の推奨直径は、タップメーカー各社が形状の種類や加工する材料などによって細かく表になって下穴径が分かれていますが、これらは自動加工機で何か所も効率的にタップ加工するための推奨サイズであって、その都度タップメーカーごとに下穴の推奨径を確認するのはとても面倒です。
マシニングセンターなどの自動加工機械を使わず、ボール盤やDIYなどでハンドタップを使ってネジ穴を作る場合などは、そこまで厳密に下穴の精度を考える必要は一切ありません。
加工したいネジサイズ別のドリルであける下穴径の早見表をまとめておきます。
その次に非常に簡単な「下穴径の計算方法」と、少し複雑な「下穴の深さの計算方法」を解説していきます。
タップ加工時の下穴ドリル径
以下のイラストはネジ部分と下穴の関係を表しています。ドリルであける下穴はネジ径より必ず小さくなります。
タップを立てるときのドリルの下穴直径は、作りたいネジ(タップ)のM径でほとんど決まってしまうようなものなので、表にまとめておきます。
なお、以下の表は並目ネジ用のドリル下穴径なので、細目の場合やピッチが特殊な場合はこの限りではありません。
並目以外は以下に説明する計算式で求めてください。
ネジ径(並目)に対する下穴径の早見表
タップ加工の下穴早見表(並目)
ネジ径 | ピッチ | 下穴ドリル径 |
---|---|---|
M1 | 0.25 | 0.8 |
M1.2 | 0.25 | 0.9 |
M1.6 | 0.35 | 1.3 |
M2 | 0.4 | 1.6 |
M2.5 | 0.45 | 2.1 |
M3 | 0.5 | 2.5 |
M4 | 0.7 | 3.3 |
M5 | 0.8 | 4.2 |
M6 | 1.0 | 5.0 |
M8 | 1.25 | 6.8 |
M10 | 1.5 | 8.5 |
M12 | 1.75 | 10.2 |
M14 | 2.0 | 12.0 |
M16 | 2.0 | 14.0 |
M18 | 2.5 | 15.5 |
M20 | 2.5 | 17.5 |
上記の早見表を印刷したい場合はこちらのpdfをご利用ください。
材料が硬ければ下穴径を大きくできる
上記の早見表は理論的な下穴径になりますので、ドリル径が0.1~0.2㎜前後してもタップは立てることはできます。
早見表の下穴直径はアルミや真鍮などの比較的柔らかい素材用として考えてください。
ステンレスや鉄の材料に下穴を空ける場合は、M6以上なら0.2㎜ほど大きいドリル(5.2㎜)を選んだほうがタップは立てやすく、ネジとしての十分な強度は保てます。※ネジの深さが直径×1.5ほど確保できる場合
下穴径の計算方法
タップ用の下穴サイズの基本的な考え方では、ネジサイズの直径からピッチを引いた数が下穴サイズの基準となります。
これはネジの山と谷が規則的に並んでいるピッチ同士がネジ穴とボルトなどのネジ部が結合することから、ピッチの半分の高さx2=ピッチ分を引けば、ネジ穴側の下穴が求められます。
計算方法はとても簡単です。
【ネジ径】-【ピッチ】=下穴径
例)M8のネジ穴を作りたいときは、一般的なピッチであるP1.25の場合、
8.0 – 1.25 = 6.75
この計算式から、ドリルを使ってあける下穴のサイズは6.7㎜か6.8㎜になります。
タップ加工時のドリル下穴深さ
下穴の深さは、ネジ穴を構成する3っつの要素の中では最も深く(長く)なります。
- ①ネジの長さ
- ②有効ネジ部
- ③下穴深さ
下穴深さの計算方法(ドリル先端まで)
下穴の深さは使用するタップの有効刃の長さや形にもより異なるため一概には言えませんが、使用したいネジやボルトの長さから逆算すれば、目安ではピッチ分の2.5倍以上とドリルの先端高さ分を追加した深さ(長さ)で大抵は足ります。
深さの場合は計算方法が少し複雑です。
- 使用したいネジの長さから逆算する方法です。
- 深さはドリルの先端を含みます。
【ネジの長さ】+【ピッチ×2.5】+【下穴径25%】=下穴深さ
このピッチの2.5倍は2.5山分の意味になります。さらにドリルの先端の角度がありますので、下穴径の+25%分を加えます。
例えばM6×10㎜のネジを使いたい場合は、ピッチが1㎜のため、ピッチ分の余裕分2.5㎜とドリル先端分1.25を足した深さ10+2.5+1.25=13.75となり、下穴深さドリル先端で最低でも13.8㎜以上が目安の深さとなります。
M8×20㎜(P1.25)のネジを使いたい場合の下穴深さ計算例
ドリルの下穴深さ自動計算
タップ加工時に必要なドリルの下穴深さを計算します。
1.「ネジ径」2.「ネジの長さ」3.「ネジのピッチ」を入力してください。
使用したいボルトの長さを基準として計算しますので、「ドリルの下穴深さは最低でもこれ以上」といった目安としてご利用ください。
計算が面倒な場合
計算は少し面倒という方には、M8までなら使用したいネジの長さから+5㎜で覚えておくほうが分かりやすいです。(M3なら+3㎜)
(M4~M8まで)長さ15㎜のネジを使用したい場合の下穴深さは、15+5で20mmの下穴深さにします。
もちろん、図面に下穴の指示があったり、下穴がキリ(ドリル)でない場合など条件は様々変わりますので、一例だと捉えてください。
タップ下穴径と下穴深さのまとめ
- タップ加工の下穴径はネジ径からピッチを引いた値が基本径(ドリル径)になる。
- 金属の中でも硬質な材料(ステン・鉄)の場合はM6以上で深さが十分ある場合は下穴径を0.2㎜程度太くしてもOK
- 自動機械などでタッパーを用いてタップ加工する場合は、タップメーカー推奨値を確認する事
- 下穴の深さは「使用するボルトの長さ」+「ネジピッチ×2.5山分」+「下穴径×1.25(+25%)」が目安の最低必要深さになる。
- 計算が面倒なら下穴深さはM4~M8までは使用するネジの長さに+5mm
この記事は機械加工の中でもアルミフルビレット技術を駆使して独自の観点によって「独創性のアイテム」を造り出す、alumania(アルマニア)の専門スタッフにより執筆されています。
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